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「美智さんは、いつどこにいても何でも知っている。今、私がこんなことをすることまで知っていた。どうしてです?」
勢いはないものの、逆切れのように見えた。
「……それを知ってどうするの?」
「会社のためです」
「どういうこと?」
「美智さんは、私たちが知らない何かをやっている。盗聴とか、盗撮とか……。それは悪いことだと思います」
「……そういうこと」
美智はスマホの画面を希美に向ける。そこには、パソコンのカメラがとらえている美智と希美の姿が映っていた。
「インフルエンザで休む前に、誰かが私のパソコンに細工をしたと思ったのよ。それで知り合いに調べてもらったらウイルスがあった。その人が、誰かがパソコンに触れたら画像を送るソフトを入れてくれた。だから、希美さんがデータのコピーを取っていると分かったのよ」
「それで……」
「それだけじゃない。希美さんは片桐監査役の所に出入りしているでしょ?」
「え?」
希美の目が大きく開いた。
「工藤課長にも訊かれたはずよ」
「監査役と会うことが悪いことですか?」
「監査役が何をしようとしているのか、知っているの?」
「いいえ、私は何も知りません」
希美は噓を言った。それが分かるから、美智のため息が漏れた。
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