インフルエンザ

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自室のベッドに横になると、加湿器の音が耳触りだった。一度、音が気になりだすと、今度はコチコチと鳴る目覚まし時計の音も気になった。高校受験の時に祐介に買ってもらったゼンマイ式のそれは、近頃調子が悪くて遅れたり止まったりすることが多い。それがインフルエンザの自分と重なった。 「何かの呪いかしら……」 つぶやいて眼を閉じると、一瞬、誰かの瞳が脳裏を過る。 「誰?」 自分に尋ねると、『美智さんが、自宅で何をしているのかは、間もなくわかると思います』と、声がした。 パッと目を開け、室内を見回して希美の姿を探す。いるはずがなかった。 「薬のせいかな……」 コチコチ鳴る音が大きくなったような気がした。 「これのせい?」 自宅に置きっぱなしのゼンマイ仕掛けの時計に盗聴器が仕掛けられているはずはない。加湿器を止め、目覚まし時計を抱いて布団にもぐりこむと、いつの間にか深い眠りに落ちた。
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