僕の本当に好きなもの

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僕の本当に好きなもの

『ごめんなさい。今日はどうしても行けそうにありません』  そんなメッセージが入ったのは金曜日の3限目。この講義が終わった後に会おうと約束していたが、初めてのキャンセルの連絡だった。  何かあったのだろうか。  少し心配になって、僕は返信する。 『全然大丈夫ですよ。体調でも悪いんですか?』  東雲さんの返事はすぐに来た。 『いえ、その、お恥ずかしながら……次の講義の課題が間に合ってなくて(泣)』  ははっ、と声を出して笑ってしまった。何人かがこちらを向く。僕はすぐに笑みを潜めた。  いや可愛すぎるな、この文章。今まで読んだ小説の中でも、これより微笑ましい文章があっただろうか。  スマホの画面を見ながらニヤニヤしていると、再びバイブレーションが小さく震える。  東雲さんからもう一通メッセージが届いた。 『お詫びといってはなんですが、良かったら明日甘いものでも食べに行きませんか?』  ええっ、と声を出して驚いてしまった。さっきより多くの人がこちらを向く。僕はその驚きをすぐには潜められなかった。  え、いや、これってまさか。  僕は大いに戸惑ったが、優秀な僕の指は勝手に返信してくれた。 『喜んで』
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