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【第一章 幼少期終】〜退院の日〜
それは突然のことだった
夜中にサユリさんにそっと起こされ
電話を耳に当てられる
それはちゃんと呂律の回っている母親の声だった。まえの元気な声で
「迎えに行くからまたママと暮らしてくれる?」
と
私は何故か「うー ー ん。」と迷ってしまう
母親のことが嫌いになったわけじゃない。
ただ、また不安になるのが怖かったのだ
杏果ちゃんや梨花ちゃんとサユリさんと数ヶ月も暮らしそれは不安にも無縁な毎日だった。
お泊まり会が終わってしまうのも寂しく感じた
すると残念そうな声で
「え?暮らしてくれんの?」
サユリさんは心配そうに見ている
私は「ねむいんや」と答え
母親は眠かっただけなのかと
「そりゃそうやよね!ごめんね、今日はまだサユリさんの家で寝て明日何か持って迎えにいくさかい」
私は電話を静香さんに渡した
なにやら話している
ひたすら考えた。眠かったわけじゃない
不安や心配もなにもいらないこの生活から離れることが怖く逃げていた
そんな生活を数ヶ月も過ごし母親の存在を段々薄れていってしまっていたのだ。
なにより、また自殺をされたらどうしようというのもあった。
布団に潜り込み、母親と過ごしてきたことや母親の元気な姿を想像する。母親が作ってくれた大好きな料理や母親とよく行った温泉がよみがえる。
それに私がいなくなったら母親はどうなってしまうのだろうと。
常に私に言っていた
温泉で頭を洗ってくれる時も
〝ママが信用しとるのは、あんただけなんや〟
と嬉しそうに言っている姿。
その瞬間、私はすぐに母親に会いたくなった
「やっぱり帰りたい」とサユリさんの元へ行く
「じゃあ準備しようっか」と言い
杏果ちゃんと梨花ちゃんは
「え?帰ってまうの??」
と言った
私は答えずにすぐに準備をした
そして杏果ちゃんと梨花ちゃんに
「またね!」と手を振った
サユリさんが扉を開けてくれ私は外に出た
鍵を閉め一緒に階段を降りる
ふと駐車場をみた
見覚えのある車がとまっている
私はすぐに気づいた。
「ママの車やー!!」
するとその車から大好きな母親が降りて来たのがわかった
私は走って母親の元へ行った
母親は元気な姿を取り戻しニコニコして私を抱き締めたのだ。
嬉しかった。お見舞いへ行った時の母親とは別人のように取り戻したその姿はまえより何処かたくましくさえみえた。
母親はサユリさんに、お礼を言い 私にこれまでサユリさん家でお世話になった分の掛かったであろう費用を渡した。
サユリさんは「いや、いらんよいらんよ!」
と言う
母親「受け取ってほしい。本当に助かったんや。ありがとうございます。」
私と母親は車へ乗り久しぶりに自分の家へと帰った。
家はあのままなのだろうか?
私は少し不安がったが
家に帰るとピカピカであの事件があったとは思えないほど片付いてあった。
母親は「もう、遅いから寝なね。明日また杏果ちゃんと梨花ちゃんにもお礼いわなかんから朝ごはん持ってていくよ」
私はまた会えるんだと楽しみに
「うん!」
と静かに寝た。
朝になり
母親はサユリさんと電話をしていた
車へ乗り杏果ちゃんと梨花ちゃんにもお礼を言う為朝ごはんを持って静香さん家に向かう
一緒に階段を登りピンポーンと鳴らした
「どーぞー!!!」
と元気な声が聞こえた
持っていった朝ごはんに大喜びの杏果ちゃんと梨花ちゃん
みんなで一緒に食べ色々な話をした
母親は「杏果ちゃんも梨花ちゃんもありがとうね!」と言い
ご飯食べながらニコニコしながら
「うん!!!」と答えていた
別れを言い、私と母親は新たな生活を開始した
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