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目を開けてみた。 だけど、何も見えない。 暗くて何も見えないと言う訳ではなくて、どうやら目隠しのような、目を拘束するようなもので、視界を奪われているらしい。 ここは地獄ではないのか? 僕はあの時、学校の屋上から身を投げて、ここでは無いどこか遠くへ行ったはずだった。 でもここはその『どこか』ではないらしい。その証拠に、僕は椅子に座らされ、手足も拘束されている。 「気が付いたのかい?君には少し不自由な思いをさせるけど、必ず君が望む世界を、君が苦しまずに済む世界を用意するから。だからそれまで待っていて欲しい」 聞いたことのない、見知らぬ大人の男の人の声。 こんな体の自由も、視界も奪われているのに、この人の声はとても優しく穏やかで、全く恐怖を感じなかった。 だけど この人の言う『僕が望む世界』とはなんのことなのだろう…。僕はこの世界に何も望んでいないし、この世界から消えたくて、ここではないどこか遠くへ行きたくて、屋上から身を投げたのに。 それに、もしあの時僕を助けたのだとしたら、この男の人は、僕の後をずっとつけていたのでは?なんのために? 「僕は学校の屋上から身を投げたはずなんです。あなたが僕を助けたのですか?」 「そうだよ。間に合って良かったよ、やっと君ために私が役に立てる」 男の人が近づいてくる気配を感じて、僕はそこで初めて少し恐怖を感じた。 ビクッと体を震わせると、男の人は 「怖がらせてしまって済まない」 そう言って、僕の頭を優しく撫でた。 その感触はずっと前にも感じた事があった、なぜだかそんな気がした。 僕をここに連れて来た目的が分からない不気味さはあったけれど、僕はもう一度死んだようなものだから、あっさりとこの状況を全て受け入れてしまった…。 こうして、僕とこの男の人との奇妙な生活は始まった。
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