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ここは多分、山奥とか町から離れた場所にある建物のようだった。
視界を奪われているのでよく分からないけど、車の音も人も声も全く聞こえてこないから。聞こえるは鳥のさえずりや、風で葉が擦り合う音くらい。
僕はその建物の部屋の真ん中で、椅子に座らされ、手足を椅子に縛り付けられている。それでも、トイレの時は外してもらい、二日置きにお風呂にも入れてもらえた。目の拘束を外すので、その時は毎回睡眠薬を飲まされたけれど…。
食事も三食、買ってきた物ではなく、男の人が作った温かいものを与えられた。時にはおやつまで出てくる事もあった。
「今日はおやつも作ったよ。さあ、お食べ」
男の人がスプーンに乗せた何かを、僕の口に運んで来て、僕はそれを口にした。
とろりとした食感の甘い何か。
多分、プリンか何かだと思うけど、プリンを手作りするって難しいんじゃないかって思う。だけど、このプリンみたいな何かは、よくおやつに出てくる。
美味しいけど、これって一体なんなんだろう?
前に一度聞いたことあるけど、男の人は教えてくれなかった。
「今日の夕飯はハンバーグにするからね。君、好きだったよね」
そう、僕は昔からハンバーグが大好きだった。それは僕が覚えている、ただ一つの母が作ってくれる思い出の料理だったから。
ここに来てから、この男の人が作るハンバーグを何度か食べている。母の作るそれとは違って、少しスパイスかなにかのクセの強い味がするけど、優しかった母を思い出す事が出来るのもあって、この男の人が作る料理の中では一番好きだった。
それにしても、男の人が作るからなのかな?毎日毎日、朝から晩まで肉料理ばかりな気がする…。
生かされているのだから、文句は言えないけど、だけど……なんで僕をこんな形で生かしておくのだろう?殺人目的でも誘拐目的でもなく、なんで僕を連れてきて、こんな事をしているのだろう?
常にそんな疑問を頭に浮かべながら、僕はこの男の人と想像以上に、長く長く共同生活をすることとなった。
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