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 その昔、ネズミの国チュスラエルにチュージというファンタジー教の伝道師がいた。  チュージは貧しいネズミたちに共感してもらいやすいように態とみすぼらしい身なりをして貧しいネズミたちを集めては、こう説法していた。 「貧しくとも貧しい生活をファンタジー化すれば、現実を逃れ、豊かに感じられるようになる。例えば、パンの耳をステーキだと空想すれば、パンの耳がステーキになる。しかし、そう感じるには深い信仰心と相当な修行が必要だ。だからファンタジー教徒初心者はパンの耳を見たら難易度を下げてそれにマーガリンが塗ってあると空想して、その程度に感じられる位のことから始めれば良い。同様に普段会う動物に対しても段階を踏んで良いようにファンタジー化すれば、やがてはみんな良い動物に思えるようになる。そうして物質的にも精神的にも生活が豊かになる訳だ。わしは斯様にして生活を豊かに送っておる。」
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