人の性《さが》と国の崩壊

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 白い息を吐きながら歩いていくと、本屋の倉庫の前に到着した。仮面をつけた30代くらいの男性が懐中電灯であたりを照らしながら見張っている。  「清水、新聞紙を巻いたトイレットペーパーの芯は持ってるか?」ゼーが小声で聞くと、清水はうなずいた。  「俺があの男を転ばせる。もしあいつがそっちに来たら、お前はその武器で 応戦してくれ」と言って、ゼーはあかりとともに男の後ろに回った。  男が二人に気付いて懐中電灯を向ける。まぶしい光に目がくらんだが、ゼーが男の足を蹴って「二宮、今だ。懐中電灯で仮面を壊せ!」と叫ぶ。あかりは 懐中電灯をつかみ、仮面に当てる。二度目の攻撃でひびが入り、割れた。  ゼーが男のネクタイをつかみ、「姉さんを倉庫に監禁したのはあんただな」と低い声で言うと、男はにやりと笑った。「そうさ。美人だったから、倉庫に 鍵をかけて閉じ込めた。今ごろ、寒さに震えてるだろうよ」  男の言葉に激高したゼーは彼のスーツをつかんで彼を地面にたたきつける。鼻血が地面に飛び散った。痛みに悲鳴をあげる男を無視して、三人は倉庫へと向かった。    
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