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第三章 「姉との再会」
倉庫の前に着くと、かすかに女性の泣き声が聞こえてきた。ゼーが廊下に
落ちていた鍵を拾ってドアノブに差し込むと、ドアが開いた。
中にいたのは長い漆黒の髪を白いヘアゴムで団子の形にした20代くらいの女性だった。口に粘着テープを三重に巻かれている。ゼーが「ブルーメ姉さん」と声をかけると、涙が彼女のほおをつたった。あかりが粘着テープをはがすと、「ありがとう」と礼を言って「ゼーも無事だったのね」と呟いた。
「この子たちは?」と姉に聞かれ、ゼーが「同級生の二宮と清水だ」と答える。「雪柳高校一年三組、二宮あかりです。よろしく」「同じく清水清二っす。よろしく」と名乗ると、「こちらこそ。私はゼーの姉、ブルーメ。よろしくね、あかりちゃん、清二君」とにっこり笑った。
「姉さん、寒いだろ。コート持ってきたから着てくれ」と言って、ゼーが
茶色いコートを姉に渡す。「ありがとう」と言う彼女に、ゼーが顔を赤くしながら「本屋の店長や先輩たちは?」と聞く。
「分からない。ここに閉じ込められたのは私だけだから」「そうか。これから俺たちの『本部』に向かおうと思ってるんだけど、歩けるか?」「うん。お風呂にも入りたいな。ところで本部ってどこ?」「ここから歩いて15分のところにある市立図書館。そこにうちの高校の先生や同じクラスの奴らも来てるんだよ。銭湯はこの道をまっすぐ進んでいったところにある」
「分かった。じゃあ行こう」と言って、ブルーメはゆっくりと階段を下りていく。あかりやゼーたちもあとに続きながらあたりを見回す。敵に見つかることなく外に出ることができた。
白い布でできた看板がかかった建物が見えてくると、四人は静かに戸を開けて中に入った。看板には墨で『銭湯 清』と書かれていて、中には誰もいない。あかりとブルーメは女湯、ゼーと清水は男湯の方にそれぞれ向かう。脱衣所にはかごと新品のタオルが置かれていた。
体を洗い終えた後に湯船に入ると、思わずため息がもれた。ブルーメが髪留めをはずすと、長い漆黒の髪がひと房床に落ちた。
「おとといからずっとあそこに監禁されてたから、さっぱりできてよかった」
とにっこり笑う彼女に、「お風呂っていいですよね」とあかりも言う。
ゼーと清水も男湯で久しぶりのお湯につかっていた。「はー気持ちいい。
俺んち狭いから風呂がないんだよ。それにしてもお前、体が引き締まってるよな」と清水が言うと、「小中と運動部だったからな。両親は仕事ばかりしていた。もう亡くなっているだろうな」と返され、言葉が出てこなかった。
湯船から上がり、着替えを終えた四人は市立図書館へと向かった。
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