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第五章 「日本の瓦解」
二階にはミステリーやホラーなどの小説が著者の名前順に並べられている。
「座ってくれ」とゼーに言われて赤いクッションの椅子に腰かけると、彼が隣に座った。しばらく黙ってから、ゼーは口を開いた。
「二宮。オレは今まで、誰かと一緒にいたいと思うことがなかった。だけど
お前と出会って、そういう気持ちになったんだ。
あかり。オレは頭に血がのぼると暴走する男だけど、一緒にいてくれるか?」
と言われ、あかりは驚いて目を丸くする。
突然、一階からブルーメの悲鳴と、うおおーという男女の叫び声が聞こえてきた。仮面をつけた人々が館内に入ってきたのだ。
急いで二人で一階に向かうと、あかりの祖父を殺した長身の男がブルーメ
の手をロープで縛り、口にさるぐつわをかませた。
あかりは懐中電灯を男の目に向け、彼が転んだすきに先を尖らせた小枝を
口の中に入れた。すかさず清水が男の腹にパンチして意識を失わせ、外へと
連れて行った。驚く彼女に、清水は「小5からボクシングジムに通ってたんだ。それはそうとさっき、ゼーに好きだって言われてたろ。あー失恋した」と言って笑った。
「んー、んんんー」とうめく彼女に「ブルーメさん、二階に行きましょう」と声をかけてロープをほどき、階段を上がる。さるぐつわをはずすと、「ありがとう。また助けられたね」とにっこり笑った。
仮面をつけた五十代の女性が、ゼーの足を蹴った。あかりは彼に駆け寄り、
「手を出さないで!」と叫んだ。「うるさいわよ!蹴られたいの!?」と怒鳴る彼女を、体育教師の佐伯が押さえつけた。図書館は高校生と大人が交戦し、怒鳴りあう場所になっていた。
そんな中でも国会議員たちは長い時間怒鳴りあい、他の市民たちに相手にされなくなっていた。日本はその日のうちに崩壊し、世界地図からも消えた。
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