触るよ

6/10
340人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「はいはい、ちゃんと言えって事ね」 「そ」 「彼女に、なって?」 「はい」 即答してしまった自分に恥ずかしくなる。 彼も恥ずかしいのか、 「飲んでからと思ったのに」 ボソッとそう言った。 「トライって何点?」 「さぁ、今日のは何点だろ」 「100点!」 「採点が甘い」 「ねぇ、いつから私の事好きなの?」 「あー……全部ちゃんと聞きたい人だー」 「うん」 「それは、酔ってからでいい?」 「……うーん、うん」 「触る?」 「それは、酔ってからでいい?」 「飲むしかないな」 「今日まだ……週始め」 「瞬発力、生かせず」 水城くんが複雑そうに笑うもので、私は顔が緩みっぱなしだった。 二人で話してみると、会社で見る彼ともグラウンドで見た彼とも違って、自分がとても特別な、存在になれた様な気になった。 「すみれ」 急に名前を呼ばれ、固まった。名前を呼ばれる威力って凄い。 「呼びたかっただけ」 そう言うとスタスタと歩き出す。私は足が覚束なくなって、手を繋いでくれて良かったなって、思った。 「可愛い名前」 年下の子に可愛いなどと言われなれないセリフを吐かれ、恥ずかしい。 少し後ろから見る彼も……少し、耳が赤い?
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!