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二人で会うと、やっぱりより一層逞しく見える。二人っきりの部屋で、彼の逞しい腕にもたれた。
この時だけは、遠く感じる事もなく……少しの切なさをしまいこんだ。
「なぁ」
「んー?」
「ラグビーに限らず、スポーツ選手は結婚早いよな」
「うん、早い!何でだろね」
「メンタルが安定するから。モテるからね、早く落ち着かせたいから結婚勧められる」
モテると自分で言っちゃえるところ。そうなんだよね。
「なるほどね。あ!お相手はアナウンサーさん?」
「……まぁ、多いな。後は……」
「後は?」
「姉さん女房」
「……」
「意味、分かる?」
「……」
「すみれは、ちゃんと言って欲しい人だったなー……」
「……」
ポカポカと胸が熱くなってくる。分かるに決まってる。それなのに、言葉が出てこない。
赤くなってるだろう鼻が恥ずかしくて手で隠した。
「結婚、しよ?」
「ふふ、うん……愛の…トラ……」
「言うなっての」
「じゃあ、秀人を……」
嬉しくて恥ずかしくて茶化そうとすると、最後まで言わせて貰えず……私の口を彼が塞ぐ。
勿論、熱い唇で。
あー……とっても素敵な彼の胸板にもう一度顔を埋め、そんな私を彼がいつまでも包んでくれた。
「ねぇ、秀人、ありがとう」
「こっちも、ね」
目の前で可愛い笑顔が溢れた。
──後日、早い結婚の報告に、またからかわれる事にはなったけれど……あっという間に、社内は祝福モード。
彼の落ち着く場所が私だってことが嬉しかった。
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