触るよ

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──────数年後 小さな体に大きめのダボダボのユニフォーム。この小さな体もいつか、私の一回りも二回りも大きくなるのだろう。 たくましい父親の肩に乗せられて、小さな息子が私に満面の笑みを向けた。 もう片方の腕には、ユニフォームをワンピースのように着こなした、娘。 いつか、想像した光景。 青い空に、白い雲。 緑のグラウンドに赤いユニフォーム。 たくましい体に、小さな子供がぶら下がるように抱き抱えられている。 震えるほど幸せな光景に、笑って……泣いた。 会社で見る彼、グラウンドで見る彼、私の前の彼。 それから……新たに、あんな顔も。 初めて、ここへ来た日から、私はあの人だけをすぐに見つけられるようになった。今では社内では誰にも負けないくらいルールに詳しくなった。 ゴールラインと22メートルラインの間。そこから、もう一度手を振った。3つの可愛い笑顔へ向かって。
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