ep.1 はじまりの光【魔女】

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 咄嗟(とっさ)に胸を押さえてしまったメルは、突進してくるグリードを避けることができない。  寸前、キャンティーの(やり)と斧が合体した武器『(ハル)バード』が、グリードを貫いた。 「大丈夫?後は私に任せて、休んでてもいいわよ」 「大丈夫。まだ戦えます」 「無理はしないでね!」  これだけ戦ったにも関わらず、息も切らさないキャンティーを見て、 ─まだまだ敵わない  メルはそう思った。  さらに一刻がたった。  メルの前には足を切られ、もがきながらも命を奪おうと、牙を向くグリードが横たわっていた。 「意外と手間取ってしまったわ。憐れ……これで最後。」  メルが剣を振り上げた瞬間、「ドクンッ」と今までで最も大きく心臓が跳ねた。 ─本当に最後かしら……? 「あうぁッ」  メルは思わず剣を落とし、胸に苦しそうに手を当てて地面にうずくまる。そして、そのまま動かなくなってしまった。 「メル!大丈夫!?」  キャンティーが慌てて駆け寄る。その時。 「うああああああああッ!!!」  メルは突然狂ったように叫びだした。そして上半身を天に向け、固まった。 「なんなの……これ?」  天に向け大きく開けられたメルの口から、黒い煙のようなものが止めどなく立ち昇る。メルは既に気を失ってしまっている。  その煙は一点に集まり、徐々に人のような形へと姿を変えていった。そして、 「ふぅ……。やぁっと我の出番か」  そう言って、女は現れた。  女は闇の中で妖艶に光る赤い目を持ち、口元から犬歯(けんし)を覗かせ、全身を黒装束(くろしょうぞく)に身を包む。そして、その帽子からは美しい銀色の長い髪が揺れている。 「いきなり出て来て、あんた何者よ?」  キャンティーはただならぬものを感じ、すぐさま戦闘体勢をとる。 「我か?我の名前はマドレ。お主らがいう魔女ってやつよ」  殺気を放つキャンティーを見ても、魔女はどこか愉快(ゆかい)そうに嗤っている。 「楽しそうね。何が目的なのかしら?」 「ずいぶんと質問の多い小娘よのぉ。まあよい、我は(きぼう)の子を探しておる。お主知らぬか?」 「希望の子……?知らないわね。まあ、知っていても教えないけど」  マドレという名前。言葉とは裏腹に、キャンティーには心当たりがあった。
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