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しかし、その戦いにも決着の時は確実に近づいていた。
「くそっ!もう手に力が……」
ここに来て勢いを増す魔女の猛攻に対し、キャンティーの体力は限界をとうに越えていた。
そしてとうとう均衡が破れる。
「ぐッ……!」
春バードによる光の傘をすり抜けた一本の剣が、キャンティーの肩口を貫いたのである。尚もキャンティーは、気力だけで春バードを回し続ける。
また一本すり抜けた剣が、キャンティーの太ももを貫いた。思わず片膝を地面に着くも、キャンティーは諦めない。
「キャンティーさんッ!もう十分です!自分の身は自分で守ります。このままでは……あなたが……」
隊士達は必死に叫ぶ。しかし、キャンティーは、
「あたしの最後のわがままだ……。あたしにお前達を守らせてくれ……」
そう言うと「ニコッ」と優しく笑った。無情にも漆黒の剣は、キャンティーの笑顔へ向かって、また一本と降ってくる。
─ここまでか……
そう思った瞬間、一閃の光が漆黒の剣を貫き、キャンティー目の前を通りすぎた。
光の飛んできた方を振り向くと、そこにはずぶ濡れになったキノが立っていた。
「待たせたな」
そう言うとキノは魔女の上空に渦巻く黒い曇めがけ、引き金を引いた。
「いっつも遅いんだよ……」
張りつめた意識から放たれ、キャンティーは安堵と共に地面に崩れ落ちた。
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