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「老いて尚、光輝く人間の強さを見せてやるぞ!」
キノと魔女、二人だけの闘いは他の者に入る隙を全く与えずに続く。そして、キノの予備弾倉も残り一つとなった頃。
「いい加減くたばったらどうだァ!」
魔女はまどろっこしい遠距離戦を嫌ったのか、左手を漆黒の剣に変える。
「《ヤミノミカズチ》!!」
そして痺れを切らして、下半身を黒い煙に変えながら、まるで雷のような速さで斬り込んで来た。
「ぐっ!」
キノはバックステップを踏み、それを間一髪でかわす。鋒がかすめたのか、頬から血が流れ落ちる。
─十数年前よりもはるかに強くなっていやがるのぉ。こっちの予備弾倉も残り一つ……時間はかけられん。マドレが冷静じゃない、今がチャンスじゃな。
キノは大きく深呼吸をした。そして、瞬きも忘れ、一秒たりとも目を離さず、闘いの行方を見守っていたメルをちらりと見た。
お互いの視線が交差する。その間、僅か一秒。メルはキノの意思を確かに汲み取った。腰をあげ、臨戦態勢に入る。
覚悟は決まった。次に魔女が斬り込んできた時が勝負。
「上手くかわしたようだが、これならどうだ?
「《ヤミノミカズチ 弐ノ段》」
魔女は右手も漆黒の剣に変え、深く体を沈み込ませた。
そして、先よりも速く斬り込んできた。
「くそッ!」
キノは左手の一撃を間一髪かわす。
「甘い!隙だらけだぞォ!」
魔女の右手の剣が、キノの右目を切り裂いた。赤い血がキノの視界を覆い尽くす。
「ぐッ。置き土産だ、こいつでも喰らっとけ!」
キノは「ズキンッ」という痛みに耐えながら、ベルトの左に装着してあった閃光玉を魔女に向かって投げつける。
激しい光と爆風がそこを中心に一瞬で広がり、辺りを包む。
「ぐアアアァァァァッッ!!痛いッ、焼けるッ!!許さんぞォ!!」
爆風によって立ち込めた土煙の中で、魔女は強い光を浴びたことにより肌を焼かれ、膝を着きもがき苦しんでいた。美しかった容姿は見る影もなく醜い。
一方で、爆風に飛ばされ転がり魔女と距離を置いたキノは、すぐさま立ち上がって、最後の弾倉を装填すると銃を構えた。しかし、引き金を引こうとするも、落下の際に地面に打ち付けた右腕に激痛が走る。
「ぐッ……!うおおおおおおッッ!!」
キノは叫ぶことにより、アドレナリンを最大限に出して痛みを和らげる。
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