ep.1 はじまりの光【キノ】

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 「老いて尚、光輝く人間の強さを見せてやるぞ!」  キノと魔女、二人だけの闘いは他の者に入る隙を全く与えずに続く。そして、キノの予備弾倉も残り一つとなった頃。 「いい加減くたばったらどうだァ!」  魔女はまどろっこしい遠距離戦を嫌ったのか、左手を漆黒の剣に変える。 「《ヤミノミカズチ》!!」  そして痺れを切らして、下半身を黒い煙に変えながら、まるで雷のような速さで斬り込んで来た。 「ぐっ!」  キノはバックステップを踏み、それを間一髪でかわす。(きっさき)がかすめたのか、頬から血が流れ落ちる。 ─十数年前よりもはるかに強くなっていやがるのぉ。こっちの予備弾倉も残り一つ……時間はかけられん。マドレが冷静じゃない、今がチャンスじゃな。  キノは大きく深呼吸をした。そして、瞬きも忘れ、一秒たりとも目を離さず、闘いの行方を見守っていたメルをちらりと見た。  お互いの視線が交差する。その間、(わず)か一秒。メルはキノの意思を確かに汲み取った。腰をあげ、臨戦態勢に入る。  覚悟は決まった。次に魔女が斬り込んできた時が勝負。 「上手くかわしたようだが、これならどうだ? 「《ヤミノミカズチ 弐ノ段》」  魔女は右手も漆黒の剣に変え、深く体を沈み込ませた。  そして、先よりも速く斬り込んできた。 「くそッ!」  キノは左手の一撃を間一髪かわす。 「甘い!隙だらけだぞォ!」  魔女の右手の剣が、キノの右目を切り裂いた。赤い血がキノの視界を覆い尽くす。 「ぐッ。置き土産だ、こいつでも喰らっとけ!」  キノは「ズキンッ」という痛みに耐えながら、ベルトの左に装着してあった閃光玉を魔女に向かって投げつける。  激しい光と爆風がそこを中心に一瞬で広がり、辺りを包む。 「ぐアアアァァァァッッ!!痛いッ、焼けるッ!!許さんぞォ!!」  爆風によって立ち込めた土煙の中で、魔女は強い光を浴びたことにより肌を焼かれ、膝を着きもがき苦しんでいた。美しかった容姿は見る影もなく醜い。  一方で、爆風に飛ばされ転がり魔女と距離を置いたキノは、すぐさま立ち上がって、最後の弾倉を装填すると銃を構えた。しかし、引き金を引こうとするも、落下の際に地面に打ち付けた右腕に激痛が走る。 「ぐッ……!うおおおおおおッッ!!」  キノは叫ぶことにより、アドレナリンを最大限に出して痛みを和らげる。
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