11人が本棚に入れています
本棚に追加
「《ルータス・ホール・レイ》ッ!!!」
放たれた十よりも多い、数多の光が弧を描き、悲鳴をあげる魔女に全方位から襲いかかる。
「死んでたまるかァァ!!」
魔女は両腕をクロスさせながら、上半身を屈めて力を込める。そして、叫びながら勢いよく体を起こし、力を解放する。
「《ヤミノハゴロモ》オォッ!!」
その体から噴出した黒い煙は魔女を囲むように覆い、数多ある光の弾を全て吸収してしまった。
「ダメか。あとは頼むぞ……」
キノは痛む腕を抑え、既に銃を地面に落としてしまっている。
「ハァ……ハァ……」
キノの渾身の攻撃を防ぐために、かなり多くのエネルギーを使ってしまった魔女は、肩を大きく揺らし息を切らしている。
「キノォ、お前の負けだ!我にはまだ、一発剣を放つ力がある!」
瀕死の魔女はそれでも叫ぶ。
「いいや……わしらの勝ちだ」
黒い煙が晴れていく中で、魔女の瞳に映ったものはボロボロになったキノの姿ではなく、鬼気迫る表情で斬りかかってくるメルの姿であった。
「これで終わりよ。魔女!」
「《双桜ニ閃壱式 八重裂き》」
二つのピンク色の閃光が交差し、魔女を斬り裂く。
「やりましたよ……キノさん」
そう言って笑うと、メルはその勢いのまま地面に倒れた。
「よくぞやってくれた、若い力よ。あとはわしに任せておけ」
キノは震える腕で銃を拾い上げ、天を仰ぎ気絶している魔女の元に向かった。そして、両腕でしっかりと銃を抱えて照準を魔女の頭に絞る。
「これで本当に終わりだ。魔女よ……」
キノが引き金を引こうとした、その瞬間。
「じいちゃん!そんなとこで何やってんだよ!?」
声の方を振り返るとそこに立っていたのは、ずぶ濡れになりながらキノを追ってきたルーであった。
「ルー、どうして……!?」
思わぬ人物の登場にキノは動揺し、一瞬魔女から意識を外してしまった。目を覚ました魔女は、その一瞬を見逃さない。
「がはッ……!」
キノの胸そして、口から深紅の血が止めどなく流れていく。魔女の漆黒の剣に変わった右手は、キノの心臓を正確に貫いていた。
「じいちゃぁぁんッッ!!!」
ルーの叫び声は虚しく暗闇にこだました。
最初のコメントを投稿しよう!