ep.1 はじまりの光【キノ】

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「《ルータス・ホール・レイ》ッ!!!」  放たれた十よりも多い、数多(あまた)の光が弧を描き、悲鳴をあげる魔女に全方位から襲いかかる。 「死んでたまるかァァ!!」  魔女は両腕をクロスさせながら、上半身を屈めて力を込める。そして、叫びながら勢いよく体を起こし、力を解放する。 「《ヤミノハゴロモ》オォッ!!」  その体から噴出した黒い煙は魔女を囲むように覆い、数多ある光の弾を全て吸収してしまった。 「ダメか。あとは頼むぞ……」  キノは痛む腕を抑え、既に銃を地面に落としてしまっている。 「ハァ……ハァ……」  キノの渾身(こんしん)の攻撃を防ぐために、かなり多くのエネルギーを使ってしまった魔女は、肩を大きく揺らし息を切らしている。 「キノォ、お前の負けだ!我にはまだ、一発剣を放つ力がある!」  瀕死の魔女はそれでも叫ぶ。 「いいや……わしらの勝ちだ」  黒い煙が晴れていく中で、魔女の瞳に映ったものはボロボロになったキノの姿ではなく、鬼気迫る表情で斬りかかってくるメルの姿であった。 「これで終わりよ。魔女!」 「《双桜ニ閃壱式(そうおうにせんいちしき) 八重裂(やえざ)き》」  二つのピンク色の閃光が交差し、魔女を斬り裂く。 「やりましたよ……キノさん」  そう言って笑うと、メルはその勢いのまま地面に倒れた。 「よくぞやってくれた、若い力よ。あとはわしに任せておけ」  キノは震える腕で銃を拾い上げ、天を仰ぎ気絶している魔女の元に向かった。そして、両腕でしっかりと銃を抱えて照準を魔女の頭に絞る。 「これで本当に終わりだ。魔女よ……」  キノが引き金を引こうとした、その瞬間。 「じいちゃん!そんなとこで何やってんだよ!?」  声の方を振り返るとそこに立っていたのは、ずぶ濡れになりながらキノを追ってきたルーであった。 「ルー、どうして……!?」  思わぬ人物の登場にキノは動揺し、一瞬魔女から意識を外してしまった。目を覚ました魔女は、その一瞬を見逃さない。 「がはッ……!」  キノの胸そして、口から深紅の血が止めどなく流れていく。魔女の漆黒の剣に変わった右手は、キノの心臓を正確に貫いていた。 「じいちゃぁぁんッッ!!!」  ルーの叫び声は(むな)しく暗闇にこだました。
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