ep.1 エピローグ はじまりの光【産光】

1/1
前へ
/24ページ
次へ

ep.1 エピローグ はじまりの光【産光】

            *  一連の出来事から一刻が過ぎた頃、ルピス王国からの援軍が到着した。 「こっちだ!メル殿が気絶している、担架急げ!」  慌ただしくあちこちで、怪我人の救護が始まったようだ。 「キャンティーさん!待って!あなたはまだ……もうッ!」  意識を取り戻し治療を受けたキャンティーは、救護師の静止を振り切り、ルーの元へと歩いていった。  ルーの元にたどり着くと、そこには一人の白髪の老人が立っていた。 「ギャレットさんもいらしていたんですか」  キャンティーがそう声をかけたのは、ルピス王国の第二十八代国王、ギャレット=ドラ=ムーラトである。 「おぉ、キャンティーか。怪我は大丈夫なのか?」 「ご心配なく。あたしは大丈夫ですよ。ただ……」  キャンティーは今まさに救護隊によって担架に乗せられ、運ばれているキノの方を見た。その顔には白い布がかけられている。 「キノのことは非常に……残念だった。彼には色々と背負わせてしまっていた。感謝してもしきれないよ……」  そう言うギャレットの目には薄らと涙が浮かんでいる。 「ギャレットさん、あたし……決めましたよ」  キャンティーはルーの顔を見下ろしながら言う。 「ほぅ……なんだ?」 「あたしが、ルーを……」  地下世界を巡るように吹く春風と共に、生まれたての小さな光の粒が宙を舞う。ヒカリサンゴの産卵である。 「……そうだな、それがいい。キノもきっと喜んでくれるだろう」  ギャレットは上を向いてそう言った。その頬を伝う涙は、光の粒と共に彼方へと舞い去っていった。  
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加