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7月中旬 何処からともなく現れたセミ達が自身の存在をアピールするかのように鳴き始める。 「夏は嫌いだ」 小さく呟いたその声は、夏の暑さをうたうセミ達によって掻き消された。 今年から大学生になった杉田蘭丸(スギタランマル)は、特に理由もなく授業を休み、目的もなく昼過ぎの町を歩いていた。 真上を通る電車の音が。すれ違う人のイヤホンから漏れる微かな音が。そして目にかかるほどの前髪から滴り落ちる汗の一粒一粒までもが、何もしていない蘭丸を嘲笑うかのように感じた。 セミがやかましく鳴いている。
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