仕事納めの、晩でした

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昨日の忘年会。途中で川崎が会社に戻るのには気づいていた。それを宮田が眉を垂らして見送っていたことも。 営業に移ってきた彼女を、川崎のアシスタントにつけようと課長に進言したのは俺だった。 それが、くるくるとよく動いて一生懸命仕事を覚える様子を見て、後悔するようになった。 ―― 俺のそばに置きたかったな、なんて。 川崎が入社以来付き合っていた同期と別れたと、噂で聞いていた。 だから酒が入って理性とか良識が欲望を押さえられなくなってきたのを自覚しながら、同じく彼女が酒に何かを抜き取られたのを分かっていて、部屋に誘った。 「わー、ホントにグッピー居る! 奇麗!」 酒の席で「1人暮らしの寂しさに魚なんぞ飼って!」と周りにからかわれたが、 「グッピー見たい」と彼女が言い出したときは、水槽ごと俺に押しつけて引っ越した姉貴に感謝した。 水槽の前に張り付いて、「餌はきちんとあげてるんだ?」とか、「ちゃんと水槽の掃除してるー、えらいぃ!」とか。はしゃぐ宮田を見て、ああ若いなあと思った。 5歳の差は大きい。彼女も社会人に成り立てではないが、こうしてみると無邪気な女の子みたいだ。それなのに 「シャワーで良い?」 声を掛けると一瞬固まったが、振り返った顔は”女”の顔だった。 「・・・・シャワー?」 「そのつもりで来たんだよね」 「そのつもりで、誘ってくれたんですね?」 ほう、そんな顔するんだ。 「言っとくけど、俺は”彼女”じゃない女は抱かないよ?」 「―― え?」 一夜限りの、なんて 許さないからね?
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