仕事納めの、晩でした

4/21
800人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
「良かった。犯罪者扱いされなくて」 結局私もまた眠ってしまって、 次に目を覚ました時は10時を過ぎていた。 贅沢ついでに彼がお風呂の用意をしてくれていて、有り難く頂戴し今に至る。 「しませんよ。っていうか、ご迷惑をおかけしました」 貸してくれたドライヤーで髪を乾かしている間に、 カラスが行水から出てきて珈琲を淹れてくれた 「迷惑って」と吹き出した彼の濡れた黒髪は艶々してて、前髪が落ちてて普段より若く見える。 「いや、宮田は悪くないし。っつか、敬語に戻ってるし」 そりゃそうでしょ。年上だし、主任だもの。 ガサゴソと音をさせて、主任が餌の袋を開けている。キャビネットの上に置かれた水槽の中、キラキラと光るのはグッピーの群れ。 最近飼いだしたと聞いたのが昨日の忘年会で。「なにそれ寂しいの?」と同期の先輩たちにからかわれているのを見て私も笑って。しらふでは言えない事を言ってた気がする。 「タメ口でした?」 「それ程じゃなかったが。けどそんな仕事モードじゃなかったな」 緊張を隠すためには、仕事モードが便利なんだもん。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!