紺碧の馨り

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紺碧の馨り

遠い遠い海の中。 ウンディーネの私は、この青く澄んだきらめく海に住んでいる。 この広い海の中、私は城の中から抜け出してお気に入りの場所で手を伸ばしても届かない水面を見上げていた。 「マナ様、ここにいたのですか?ずいぶん探したのですよ」 「姫様、もう少しでパーティーが始まります。そろそろ御支度を」 見つかってしまった…。 私が小さく返事をすると、召し使いの魚たちが私をせかして城の自室へと押し戻し、あっという間にドレスアップさせられた。 きめの細かい肌を見せつけるように、上半身から膝あたりまではピッタリとしたレースの透けるデザインで、膝下はまるで人魚の尾ヒレのように広がっているこのドレスは、私を海の生き物たちと同じようにしていく。 ウンディーネの私は、周りの者たちとは少し違う。 召し使いたちはヒレや水掻きなどがある。 でも、ウンディーネである私たちは、本で読んだことのあるような、陸の人間たちと容姿は変わらないらしい。 それが本当なのかは、見たことがないからわからないけど。 そんなことを考えながら、ヘアメイクを施されていく自分を鏡で見ていると、この七つの海の王である父がやってきた。 「マナ、また城を抜け出していたようだな。まったく、お前ってやつは目が離せない。いつになったら王女らしくするのだ。」 「ごめんなさい、お父様。でも、城にとじ込もっていたら、この王国のこともなにもわからないと思うの。ちゃんと知りたいのよ。」 「それはいい心がけだが、あまり遠くへいくな。そして、陸には上がってはいけない。わかったな?」 「はい。お父様」 “陸には上がってはいけない” これは、私が幼い頃から言われ続けていたことだ。もちろん、私はその言いつけを守ってきていた。でも、最近は陸の世界はどんなものなのだろうと考えることが多くなった。あの輝く水面の先に、何が待っているのか、知りたいのだ。
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