紺碧の馨り

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海の生き物たちが奏でるファンファーレが、パーティーの始まりを告げた。 きらびやかに飾り付けされた部屋に、各海から集まった貴族たちが集まっていた。 また、退屈なパーティーが始まるわ。 私はそう思いながら、楽しそうにしている招待客たちをみてそっと溜め息をついた。 王女である私は、いろんな人と挨拶をしなくてはならない。社交の場は大事なのだと、お父様は言うけれど、でも親しくもない人たちとお話するなんて、つまらない。招待客の人魚たちは、とてもいろいろな表情で話をしている。でも、我が王族のウンディーネたちは、いつも淡々としている。そのなかでも私は、感情が動くことはほとんどない。そんな自分も、彼らにとってはつまらない存在なのだろう。 「マナ、ちょっといい?」 私の唯一の友達のイルカのスウが話しかけてきた。 「どうしたの?」 「エーゲ海の方々が、マナと話したいんだって」 「なによ。いつもはこちらの都合なんて全然お構いなしに話しかけてくるのに」 「まぁ、そう言わずに」 そう言ってスウは、私の背中を鼻先で押し、彼らの前まで連れてきた。 「マナ様、お忙しいところ申し訳ございません。」 「いえ、遠いところをわざわざありがとうございます。お疲れでしょう?」 「いえいえ、お招きいただき、光栄でございます。」 ニコニコとした男女が私を取り囲んでいく。そんな彼らに、何気なく私はスウを抱き寄せた。 スウがそばにいてくれたおかげで、彼らの質問攻めにも耐えることができた。その後も各海の貴族たちに囲まれながら話すと、中盤はもうどっと疲れが滲み出ていた。溜め息をつきながら玉座に座ると、父に髪を撫でられた。 「よく頑張ったな。」 「王女として当然です。」 「…おまえも、やっと様になってきたな。」 父に誉められたことなどこれまで数えるほどしかなかったので、なんだか不思議な感じがした。
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