妾の子

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 私が小学校の高学年になったとき、母は突然に亡くなった。病気だった。  それが私を今の道に進ませたわけでもあるのだが、あのときは悲しさと寂しさと悔しさがないまぜになり、涙を止めることができなかった。  その涙を目にしたのは、祖母とまったくの他人である葬儀場の人たちだけ。  同級生も教師も、マンションの人も、だれ一人として参列しなかった。父までもが。  あのときから、私は父のことを憎んでいる。  祖母とたった二人で、骨になった母を壺に収め、マンションを引き払い、母の生まれ育った田舎へと移り住むこととなった。私が頼れるのは、祖母だけだった。  その祖母も、私の高校合格を見届けることで安心をしたのか、静かに息を引き取った。  父は、学費と生活費だけは存分に手配してくれた。おかげで、経済的な心配をすることなく、学業に勤しむことができた。これは感謝すべきなのだろうか。  父親として当然のことだ、と何度も自分に言い聞かせた。葬式にすら来なかった奴に、なぜありがたいと思わなければならないのか。必ず見返してやる。次に会ったときは殺してやるとすら思った。  その怒りを原動力に、机にむかった。そして、今がある。
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