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そのお見合いの当日だ。
お日様が眩しい。車から、外を見て、絢音はこれからのことを思うと、うんざりしていた。
「先方はね、なるべくあなたに負担を掛けたくないから、って、お仲人さんもいらないし、ご両親の同席も要らないって、仰ったんですって」
そう言いながら、母はちゃっかり一緒に来ているのだ。その後、父とお出かけする、とかで、結局父も。琴音には、不安だから着いてきて!とお願いした。
じゃあ、こちらで待っていなさいね、と母に言われたのは、ホテルのレストランの半個室。
みんなが背中を向けた隙を見計らって、席を立った絢音は、外をちらっと覗く。琴音が御手洗に行く姿を見て、ピンと来た。
お化粧室にいた、琴音に、絢音はそっと声を掛ける。
「琴音ちゃん……」
「絢音ちゃん、何してるの?」
「琴音ちゃん、ちょっと、お腹痛い……」
「え?! 大変、お父様とお母様に……」
「お願い! 大袈裟にしたくないの。琴音ちゃん、お父様達に用事が出来たって言ってきて」
「分かったわ」
戻ってきた、琴音に絢音は、真剣な顔を向ける。
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