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「琴音ちゃんはどうなの?」
絢音に話を振られ、琴音が、ん?と首をかしげた。
一卵性というだけあって、顔は怖いくらいに似ている。けれど性格は全く違って、お転婆な絢音と違って、琴音はおっとりしているのだ。
お陰で醸し出す雰囲気はまるで違う。今も、綺麗な仕草で、ガトーショコラを口に入れている。
「琴音ちゃんは心配ないもの。むしろ絢音ちゃん、あなたは早くお嫁さんになる事を考えてくれないと困ります!」
琴音は母親に心配ないと思われている事に、多少は驚きながらも
姉の絢音を前にしたら、それに納得をせざるを得ない。
「お父様のお仕事先でね、奥様たちのお華の会があって、そこの奥様のお一人が同じようなことで悩んでいらっしゃって、意気投合してしまって」
「お悩み?」
「そう、ご子息がご結婚を考えられないんですって」
母が、お見合いまでの経緯を話すのを聞きながら、琴音は二口目のガトーショコラを口の中でゆっくりと溶かすように味わった。
「で、お会いすることになったから」
「え?」
「その方と」
「え?」
「今回は会う前からのお断りはさせませんから」
母は、立ち上がって文句を言おうとした、絢音をひと睨みして黙らせると、ステキな方なんですってー。とご機嫌で話し始める。
絢音の文句いっぱいの顔がみるみる意気消沈。つまりは……諦めたのだろう、こうなった母親には、何を言っても無駄だと。
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