1 プロローグ

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1 プロローグ

「異世界からの帰還者」 俺たちは世間からそう呼ばれた。 高校生になったばかりの頃、俺たちは異世界に召喚された。 そこから2年 理不尽ばかりの生活を乗り越え「魔王討伐作戦」に参加。 結果は大惨敗だった。 無惨に散った(・・・)俺たちは、神の援助を受け現代に帰還した。 俺たちは勇者団として召喚され、全員が魔法能力を身に付けた。 魔法能力は攻撃や防御、治療など様々な成果を発揮する。 数ヶ月における激動の鍛錬を受ける事で俺たちは能力を思うがままに手にした。 そして俺たちは元の世界に還された。 元の世界の摂理を無視する魔法能力を持ったまま…… 帰還した俺たちを待ち受けたのは好奇心を丸出しにする記者たちの眩しく感じるほどフラッシュだった。 「もう疲れた…」 俺、西尾(にしお) 智和(ともかず)は鳴り止まぬフラッシュの嵐に体力の限界を感じつつも笑顔を絶やす事なく代表として取材に応じている。 精神的な疲れが膨大に溜まり続けている。 何度も同じような質問を繰り返してくる記者たちは俺たちが未成年であるのにもかかわらず止まる様子がない。 昨夜からずっとこの場でカメラの前に晒され続けている俺は疲労の限界に達していた。 なぜ俺が代表なのか? 理由はただ一つ、長時間の取材で疲弊した勇者に次ぐ役職「聖守衛者(ガーディアン)」だったからだ。 ただ、取材の数は時間が経つにつれ増えてくる。 今や、俺たちの周囲を囲っている記者たちはほぼ全て外国人だった。 俺は言語が分からない質問でも完璧に返していた。 この事が出来ているのは、魔法に頼っているからだ。 《異種族言語》 異世界では、人間の言語は全て統一されていた。 亜人と呼ばれる生物との交渉の為に開発された魔法である《異種族言語》は、言葉が通じない相手と会話をする事が可能であった。 この魔法の性質を利用して今取材に応じているのだ。 「您现在可以和我们聊天的原因是什么?」 (あなた達が今、わたし達と話す事が可能な理由は何ですか?) 中国人らしい記者が俺たちに詰め寄る。 今更気づいたのか、かなり驚いている様子だ。 10時間も以上の間、多くの言語から質問ぜめにあっていた為いずれは気づかれると思っていたが、あまりにも気づくのが遅すぎるだろう。 「魔法を使っているだけです」 豪快に欠伸(あくび)をしながら俺は答えた。 これ以上は魔法について語らないといけなくなる。 そう悟った俺は放った 「《眠りたまえ(スリープ)》」 その途端、周囲を囲っていた記者達は糸が切れたこのように崩れて落ちた。 振り向くと疲れはてた友の姿があった。 「帰るぞ」 俺達は、召喚された場所と学校の校庭から立ち去った。
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