月刊週刊誌

　その断片的情報から広がる、俺の知らない業界会社常識への妄想。菓子パン協会って何やってるの、この建設会社ブラックってレベルじゃ無くない？、あの小説家こんな雑誌に連載持ってんのかよ、やべえ週刊マンホールのネタ元らしき会社見つけた……などなど。全てを知ることは出来ないが、この世界には泳ぎきれないほど広い海があり、到達しきれない数の深い秘境があり、見渡すことなど到底不可能な世界があることを、しかもそれは全く前人未到でなく、必ずやそこで生活している人間が何人もいるという事を、この月刊誌は教えてくれる。

　ああ、楽しい。「知ることなど決してできないのだ」と知ることが楽しい。
俺は毎月図書館に通っている。どんな週刊誌が特集されるのか、それは俺の毎月の楽しみになっていた。

　だが、それは先月ついに絶たれた。

　「来月を以って、休刊」だそうだ。