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デッサン
ハレムイアは良いアイディアを思いついた。
「アルウ。オシリスの像を探すいい方法があるよ」
「え、どんな方法」
「夢をよく思い出すんだ。そしてオシリスが示した場所の絵を描いてみるのさ」
「なるほどね」
アルウがペンを右手に握りデッサンをはじめた。
ハレムイアは傍で息子のデッサンを見守る。
「できたよ」
アルウは嬉しそうにハレムイアの顔を見上げた。
「上手く描けているじゃないか」
目を細め、にこにこしながら絵を褒めた。
「どこだろう」
アルウは絵と目の前の景色を見比べて違う場所だと気付く。
「椰子の木の場所が違うよ」
「もう少し下流のほうかもしれないな」
「父さん、行こう!」
ハレムイアとアルウは立ち上がると、ナイルの川沿いを下流に向かって走り出した。
「父さん! あの椰子の木」
アルウが大きな声でハレムイアを呼んだ。
「夢の絵に似てるな!」
ハレムイアもびっくりした。
「ここだよ!」
アルウはいきなりナイルに入った。
ハレムイアも慌ててアルウを追いかけた。
アルウはナイルの水が腰の辺りの深さまで来ると、右手を伸ばして川底を探り始めた。
その様子をハレムイアはしばらく見守った。
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