それでもなお、

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それでもなお、

「私たち、もう大人だから。好きっていう気持ちだけじゃ一緒にいられないよね」 もうすぐ、夜が明ける。 僕たちは、当たり前のようにまた明日も会えると思った。少なくとも僕は、そう信じていた。それなのに、彼女は背を向けようとした僕にそう言って別れを告げる。 心臓が、今にもはち切れそうだった。 でも、これは、思ってもみなかった事が起こったとか、突然の別れだとか。そういう訳では無くて。過ぎ行く日々の中で薄々予感はしていたし、容易に想像出来ることだった。 明日も彼女に会えると信じたかっただけで、本当は彼女が僕に対して別れを告げるのではないかという不安にいつも苛まれていた。これは、それがついに現実になったというだけのこと。それだけの事なのに、僕は現実を受け入れきれずに彼女が前言を撤回するのを願って止まなかった。だから、彼女の次の言葉をじっと待った。
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