それでもなお、

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しかし、どれだけ彼女の目を見ても、彼女の言葉を待ってみても、彼女の意思が変わることは無かった。 いや、本当はこれも分かっていたのかもしれない。僕はまた、現実から目を背けようとした。明日からも彼女に会える日々をおくれることをまだ信じていたし、それを強く望んでいた。でも、よく考えてみれば彼女が一度決めた事を曲げるなんてことは今までにたったの一度だって無かったということに気づいた時、彼女がようやく再び口を開いた。 「大人って、自由なはずなのに、とっても窮屈で不自由」 彼女のいつもの笑顔が、少しだけ引きつった。 確かに、大人はとても窮屈で、不自由だった。 子供の頃出来なかったことや行けなかった場所に足を運べるようになるし、お金だって自分で稼ぐことが出来る。そうやって自由を手に入れたように見えるのに、“後先のことを考える思考” を手にしてしまった僕たち大人には、未来のビジョンが見えない相手や、非道徳的な恋をすることが難しくなる。例えそれが、どれだけ好きだったとしても、どれだけ愛した人でも。 子供の頃は、“好き” か “嫌い” しかなかった。何人も好きな子がいる子だっていた。好きなものを好きだと胸を張って、純粋な気持ちで主張できるあの頃にはもう二度と戻れない。
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