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「______手続きは以上になります、何か分からない点などはありますか?」 「いえ、特には」 予想より大分時間のかかった作業に眠気と少しの苛立ちを覚えながら返す。しかしそれも『列』に並ぶためなのだから仕方ないと自分に言い聞かせる。 「分かりました、詳細は後日郵送される資料をご確認ください。良い出会いになることを祈っています」 好奇心だけで手続きしたものの、過去何年分のデータを元に決められた相手との出会いが本当に良いものであるとは自分では未だに信じ難い。サービス実施当時に比べれば『列』も今では世間に受け入れられ、運命の出会いが出来たという人まで出るくらいには好評だ。 「運命の人、か......」 何者かに決められた運命で本当に幸せになれるのか、そんなことばかり考えながら呟いた言葉は誰一人として聞いていなかった。 集合場所は近くの中学校のグラウンドだった、大勢の人間を一度に集め並ばせるのに都合の良い場所なのだろう。着いた時には既に整理が始まっており職員が慌ただしく、それでいながら笑みを浮かべながら動いている、正直言ってかなり滑稽で不気味だ。などと、そう思った矢先に職員に番号を確認され案内される。 「これからよろしくお願いしますね。」 そう言った彼女がどうやら自分の相手らしい。 なるほど、これが自分の運命の相手で、提示された幸せの形なのか。そう思った瞬間に何もかもがどうでも良くなった。
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