0人が本棚に入れています
本棚に追加
人気のないバス停に、ゴスロリメイドが居る。
ああ、バチが当たったんだと、俺は思った。
「1、2、3、4……」
悪いことは重なるらしい。
学生時代に必死で就活して入った会社を2年で辞めた。理由は「俺はもっと上を目指せる人材だ、こんな所で燻っているヒマはない!」という自惚れだ。
意気込んで入った地元の会社が、所謂ブラックだった。休日出勤は当たり前、上司から無理難題を押し付けられ、出来ても出来なくても罵声を浴びせられた。
それでも必死で食らいついて、仕事に明け暮れているうちに、彼女にフラれた。同日、実家に弟夫婦が同居する事が決まり、近々出て行ってくれと通告される。
気付くと、辞表を出していた。
会社を辞めてから2週間が経過しようとしている。この2週間で俺がやった事といえば、数社に履歴書を出した事と、やっぱりもう働けない!と、履歴書を出した事を後悔した事、カップラーメンを爆食いした事だ。
あと、毎日欠かさずやっているのが、格安で借りれた築30年6畳一間の部屋に転がり、畳の目、どころかイグサを一つ一つ数える事だ。今はその真っ只中である。
「……1001、1002、1003」
集中が途切れると、ネガティブ思考がはじまる。転職しなくたって、そこで咲けばよかったのだ。頼れる上司がいたし、競い合える同僚もいた。同期入社の佐藤は、幹部候補になったと聞いた。実家暮らしのありがたさが今になってわかった。自分の世話も満足に出来ない奴が、何が「上を目指せる人材」だ。
ぐぅ、と腹の虫が鳴く。そう言えば、最後にカップラーメンを食べてから随分と時間が経った気がする。心身はぼろぼろなのに腹は減るとは、俺の消化器官はなんとも図々しい、と自嘲した。
「甘い物、食べたい」
きっと糖分が足りてないから、同じ事をぐるぐる考えてしまうのだ。畳とにらめっこしている場合ではない。しばらく外出もしていないし、コンビニへ行こう。
最初のコメントを投稿しよう!