おかゆ

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 おかゆは、1日目と2日目を部屋の片づけに費やした。俺も手伝うと申し出たが、畳を数える訓練をしてくれと、断られた。屈む度に、短めの丈のスカートから白い足がチラリと見え、おかゆが女の子だったらな、と何度も思った。何だか逆に、目のやり場に困るからだ。    3日目。  すっかりきれいになった部屋で、久しぶりに料理をした。おかゆに、地球の料理を食べて欲しくて、俺の得意料理を振る舞った。オムライスとコンソメスープとポテトサラダだ。 「ウメ、すごいな。同時にいろんな事を処理できるなんて」  おかゆに手際の良さを褒められた。褒められるのが久しぶりすぎて、何だか泣きそうになる。  味も気に入ってくれて、作りすぎたと思った量を完食した。おかゆのセカイでは、食事は娯楽の一つでしかなく、生きるための食事は古代の話らしい。    5日目 。 「ごめん、おかゆさん。ちょっと出かけてくる」 「ああ、構わない。ウメにとってはこちらのセカイが重要だ」  調子のいい時に出していた履歴書が、 一次を通った。まあまあ大手企業で、なんでこんな所イケると思ったのか、当時の自分をどついてやりたい。今から面接に行く。緊張で、足がガクガクする。 「あー‥緊張する‥」  面接自体久しぶりだ。どんどん青ざめていく俺を哀れに思ったのか、おかゆが声をかけてくれた。 「ウメ、大丈夫だ。シューカツというものは、こっちも選ぶ立場なんだろ?」  そうか、そうだよな。とても、勇気が湧いた。  面接を終え、アパートに帰ってくると、おかゆが泣いていた。恋人を思い出してしまったらしい。そうだよな、早く帰りたいよな。おかゆはすぐに涙をぬぐい、話題を変えた。 「面接はどうだった?」 「もう、ガクガクのボロボロだよ」  スーツを着て圧迫してくる面接官に、前の上司を重ねてしまい、ずっと足の震えが治らなかった。なんとか、準備していた答えは言えたが、記憶が鮮明ではない。それだけ、余裕がなかったという事だ。 「ボクのセカイで、代々言い伝えられてる言葉がある。大事な場面で役に立つんだ。♯※☆▽…※○♯、だ」 「えーと、すいません、聞き取れません」 「あー、近いものを探すと‥…面接官を『ジャガイモと思え』みたいな感じだな」  俺は盛大に吹き出した。 「そんなの代々言い伝えてきたの!?」 「なっ……!ボクの祖父の、そのまた祖父の時代から伝わってきたんだぞ!そんなのとは失敬な!」 「だって、ジャガイモって……あはは!」 「このセカイに合わせると、だ!」  おかゆには悪いが、こんなに笑ったのはずいぶん久しぶりだ。身体がすっと、軽くなった。
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