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そしてしばらく経った日の昼下がり。俺は前と比べて随分と快適な暮らしを送っていた。
朝起きられない時はモーニングコールをして起こしてくれたり、昼飯を忘れた時は手作りの弁当をくれたり、突然の雨で傘が無い時は傘に入れてくれたり......
............いや、彼女か!?これじゃ、よくできた彼女じゃねえか!!?
......危なかった、感覚麻痺ってたわ。可愛い女の子からなら嬉しいこの優しさも、やってくれてんのは皆もれなく強面の男共だもんな。
...ていうか、いきなり周りの対応変わりすぎて色々馴染むの時間かかったんだよな......渋谷のために体張ったってだけでこうも変わるとはな。
「あの......冴嶋、さん」
俺はここ最近でやっと覚えた名前を呼んでみた。
「相模、てめぇえ!!」
いきなり胸ぐらを掴まれて持ち上げられたために、俺は床としばらくおさらばする事となった。
足をだらんと力無く下ろしたまま、俺は自分を持ち上げる男の顔を見つめる。
「俺の事は呼び捨てでいいっつっただろうがよぉ!!何だよ、今日の弁当不味かったんかオラァアアァアアア!!!」
そうなんです。冴嶋は顔はいかついけど実はすごく優しいんです。これがギャップか。
「弁当は美味しかったです、特に卵焼きが絶品でした。じゃなくて.........あの......渋谷さんが、いないなぁっ.....て.........」
「...あ?渋谷くんなら和田グループ潰しに行ってるけど」
「へー、そうなんで.....................潰しに?!」
「何を驚いてんだよ?俺らだって渋谷グループっつうグループ所属なんだぜ?敵対勢力との潰し合いなんざ日常茶飯事に決まってんだろ.........って、そういえばお前は最近まで渋谷グループの末端の末端だったからんな事知らねえのか」
「......まぁ、はい...」
「渋谷くんは強いんだぜ。強いって言葉じゃ足りないくらいにな」
そりゃあ、ある程度は強くなきゃボスは務まらないだろうから、強いだろうとはわかっていた。
だけど、あんなに抜けてるしな......いまいち信憑性に欠けるというか。
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