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そのままケモノのように色島兄に襲いかかる、なんて事はなく.........そんな事よりも結構な音をたてて床にぶつかった色島兄の頭の事で俺はいっぱいだった。
.........小さいけど、コブができてる...結構ガツンと打ったみたいだな...........色島兄よく声あげなかったな...
「色島兄、まじでごめん......痛かったよな、コブできてる」
「あ、あァ?コブ....?...あ、本当だ...こ、コブ、だな..」
確かめるように後頭部に手をやった色島兄が驚いたような声音で小さく呟いた。
「大丈夫か?何か気持ち悪いとかないか?吐き気するとか.........頭は流石にやべえよな...本当にごめん、謝って済む事じゃねぇけど...俺のせいで、色島兄に怪我を......」
「そ、んな、気にすんな...........俺も、や、やわじゃ、ねえ、から......コブ一つで、ガタガタ、言わねぇよ......こんなの、生きてりゃ、日常茶飯事、だし.........受け身、とれなかった、お、俺も悪いんだし、よ...」
優しい色島兄はそう言ってくれるが、俺が色島兄に怪我をさせたという事実は変わらない。そもそも、受け身も何も俺がいきなり飛びついたのが悪いのに。
せっかくの楽しいランチタイムだったのに、俺の興奮が高まりすぎたせいで...........色島兄がしなくてもいい怪我をしてしまった。.........これは詫びようがない。クソ野郎だな俺は.........
「.........バカ」
ふいに、色島兄が俺の頭を優しく撫でる。予期せぬ行動に戸惑い、下にある色島兄の顔を見つめる。
「んな、顔、すんな、バカ......本当に、大丈夫だ、から......それより、お前が、そういう顔してる方が...その、い、嫌だ.....せっかく、なんだ......楽しく、行こう、ぜ...?」
「......色島兄.........優しすぎかよ......本当に、ごめん.................」
「そんな、大層なもんじゃねえ......まじで、気にしてねえ、だけだ.........それより、飯、食おうぜ...?...せっかく作った、から...........ぜ、全部、食べて、ほしい、し.....」
そう言って弁当にちらりと視線をやる色島兄。俺の事を気遣ってくれているんだろうな.........やっぱり、すげえ優しいよ、色島兄は.........
俺の中に膨れ上がった劣情は流石に消え失せていた。.........これからは、もっと自分の行動に気をつけないとだな.........
「ごめんな、今起こすからな」
そう言って、起こすために色島兄の手首を掴んだ時。
「お、お前ら、何やってんだぁあぁぁああぁああああッ!!!!」
俺の下にいる色島兄によく似た、もう一人の吹奏楽部(違う)の声が聞こえた。
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