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「つうか何でてめぇにこんな事言わなきゃなんねえんだよ。関係ねえだろ」
「体調崩してたって聞いて心配で...でも大丈夫なら何よりですー」
社交辞令で一応聞いたに決まっているでござる。病み上がりのヤツに大丈夫?って聞くのは最早常套句だろう。思ってなくても聞くものなんだよ。
「まあいい......俺は、前々からお前みたいなヘタレがグループにいるのが気に入らなかったんだよ。いい機会だ。俺が直にヤキ入れてやる」
「え、お、おい、松岡...!相模は渋谷くんを助けたんだぞ。それは渋谷くん本人も言って............たか?」
いや言ってない言ってない。そもそも俺助けてないしね!俺が渋谷に缶ぶつけて激しくシェイクした缶を押し付けてびしょびしょにしただけだからね!つまり俺圧倒的加害者!
「おら、こっち来いやパシリ」
「あ、あの、俺喧嘩は」
「喧嘩じゃねぇ。これは先輩からのありがたーい忠告だ。調子に乗ると痛い目に合うんだよ覚えとけ」
無理やり席を立たされた俺と松岡が教室の真ん中で対峙する。
誰か止めてくれないものかと期待したが、道楽好きなこの連中相手には難しそうだ。いつのまにやら集まってきたギャラリーが周りを取り囲んで囃し立ててきやがる。
しかし、いくら俺がそこそこ強いにしても目指せイケメンすぎる公務員な俺としては面倒事は避けたい。...それに、松岡がどれくらいの強さなのかも知らねえし...
「ちょっと待ってください、俺は」
「これが俺の拳だ覚えとけコラァッ!!」
えぇえええええ普通喋ってる最中に攻撃する?!昨今では敵だとしてもセーラー〇ーンしかりプリ〇ュアしかり大体が変身終えるまで待ってくれるのに!?
と、松岡の拳が俺の左頬にめり込む。.........これは.........ヤバい状況になった。
いやね、コイツ思っていたより数倍弱いんですよ。拳に力が無さすぎる。蚊でもとまったのかってくらい。...この表現を現実で使う時が来るとは......つうかこれなら猫パンチの方が強いんじゃないのか。
しかし、痛くも痒くもないとはいえ、このまま微動だにしないのも松岡の神経を逆撫でしそうで面倒だ。
「っ、うわぁああああぁあ!!!!」
どうすべきか色々考えたが、とりあえず俺はスタントマンよろしく自らあたかも強く殴り飛ばされたかのように横に飛んだ。
涙ぐましい気遣いだ。何故殴られた側の俺がこんな気遣いをしなければいけないのか。
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