第一印象

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「......どうだ......?...ハァ、ハァ......げほっ……ごほっ、ふ......い、痛ェ、だろ......?」 うんすごく痛い。飛んだ時にぶつけた背中が痛いです。ていうか何でコイツこんな虫の息なの。何で殴り合いの末...みたいな死闘感出してんの。 「これに懲りたら、ハァハァ......し、渋谷くんに近づくなよ......俺に認めてほしかったら......そうだな......俺に一発ぶち込んでみろよ......そしたら、お前の事......1ミリくらいは見直すかも、なぁ......へへ、バァカ......」 やりきった顔の松岡は倒れたままの俺に見向きもせず、時折咳き込みよろめきながら自分の席に帰っていった。 それを見ていたギャラリーもこれ以上の進展はないとなったらしく、つまらなさそうに散っていく。 ......それはまぁ百歩譲っていいとしてだよ。俺さ、これいつまでやられたフリすりゃいいんだ? 見事なスタントで何かいい感じにそれっぽく倒れた所まではよかったが、ここから先の事は何も考えてなかったな、うん。 ......普通こういう時ってヒロイン的な女の子が駆け寄ってきて、大丈夫?って心配してくれる流れだよな...... まあ、男子校にそういう対応を求めるのがそもそもの間違いか。 とりあえず俺はしばらく無言のまま床に寝そべった後、誰からも注目される事なく自分の席に帰った。何故か涙が出そうだった。 こうして俺の平和な学校生活は一瞬の不穏さを漂わせたものの、俺の涙ぐましい努力のお陰で何事もなく続いていく。 ......かに思えた。
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