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そんな俺だったのだが。普通に目立たず地味に生活していたはずが、気づいた時にはいつのまにやらクラスのパシリになっていた。お陰で全員の好物を覚えてしまった。果てしなく無意味だ。
...というか、何故なんだ。目立たないように生きようとは思っていたが、こんなはずではなかったのに。
「相模ィ、いつもの買ってこいよ」
「あ、俺も俺も!よろしくねーん」
「ふざけるな欲しけりゃテメーで買いに行け暇人共」
.....なんて。言えたらいいんだけどな。殴り合い必須だな。そんな事したら明日の朝刊の一面を飾るかもしれない。
普段は真面目な子だったんですけど......なんて、テレビ出たさに口を開いた、ろくに俺を知りもしない同級生Aから語られるかもしれない。それはあまりにもな話だ。
「はーい、ただいま!!」
だから俺は今日も素直にジュースを買いに行く。今日は計14本だし、少ない方だからな。
長年のパシリ生活のお陰でたくさんのジュースを一気に運ぶ術を身につけた俺はジュースを二手に積み重ねて歩く。
一見バランスは悪そうだが案外持ちやすいという事が最近発覚したんだ。(※あくまで個人の見解なので試すのは危険である)
鼻歌交じりに廊下を歩いていて曲がり角に差し掛かった時だった。
ふいに誰かが向こうから曲がってきたじゃないか。
避けようとする俺、に気づかず、俺を避けようとする男。
結果はまあ言わずともわかるだろう。大惨事だ。
何で同じ方向に避けたかなーと冷静に考える俺の視界の端では、驚いたように目を丸くした男の端正な顔が一瞬だけ映って消えた。
あとはもうよくあるアクション映画かって感じに、ぶつかった衝撃で弾け飛んでいた缶が上から降ってきた。
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