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反射的に受け身をとったからか、ジュースが頭上に降ってきたにもかかわらずほぼ外傷は無い俺。あるとすれば振るタイプのゼリーのジュースがすでにシェイクされてしまった事くらいだ。
これを振るのを毎度楽しみにしているクラスの不良Aに俺は一体何と謝ればいいのか。...言わなければバレないか?
つうかいつも思ってたんだけど何でこんな可愛いジュース頼んでんの。女子か。ランチの後のスイーツ気取りか。
なんて考えていると、目の前にできた缶の山の奥に、俺と同じように缶の難を逃れたらしい男が膝をついて座っていた。
暗い短めの金髪が揺れている。.........あれ、コイツの、顔.........見た事あるような......
「.........いきなり缶をぶちまけてくるとは、随分な挨拶だな」
そう言いながら立ち上がった男の顔を見て口をあんぐり。...う、うげえ...ウチのクラスのボスの渋谷樹じゃねぇか。
「......誰かと思えば、お前......同じクラスの............加藤太r」
「相模雅貴です」
「ああ......鯖身?」
「いや、相模です」
「ああ......悪ぃな、人の名前覚えんのはどうも苦手でな」
いや、今のはそういう問題じゃなかったと思います。悪意が込められているのではないかと誤認してもおかしくなかったかと思います。
「......家は魚屋か?」
「え?いや、父親は建築士ですけど......何でです?」
「名字が鯖身だから...」
「いや、だから相模ですって。それどんだけ引っ張るんですか。もしかして魚好きなんですか」
「.........何だ......鯖身じゃねえのか...?.........そうか......で、サラミ」
「......相模ですけど何ですか」
「...怪我はねぇか?」
......一瞬、かけられた言葉の意味がわからずにまじまじと渋谷の顔を見つめてしまった。
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