第一印象

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「降ってきたジュース......ほとんどお前が食らっただろ?」 「......あ、そういう......いえ、平気です」 「......そうか。なら、いい。一応用心して保健室とか行っとけよ。...じゃあな」 それだけ言うと俺に背を向けて歩き去ろうとする渋谷。え、ちょっと待って。今、俺...も、もしかして、心配されたの?......嘘でしょ......そんなの、ここに来てから初めて......トキめいちゃう......じゃなくて。 「ま、待ってください、渋谷......さ、ん」 「......まだ何か用か?」 「その......あ、危ない目に合わせてすみませんでした」 「......んな事気にすんな、笹身」 「名前を近づける気はないんですね......相模です......てか、そういう訳にも......あ、そうだ!......えーと.........これ!......これどうぞ!」 そう言いながら半ば無理やり落ちていたジュースの中で比較的に状態がいいモノを渡した。 何度も振ってみたけど中身が溢れてきたりはしなかったから恐らく無事だろう。 「......詫びのつもりか?いらねぇよ」 「いえ、そんな大層なモノじゃないです。......落ちたので申し訳ないんですが......よかったら、貰ってください」 「......まあ、そんなら貰う。.....これ、中身は何だ?」 ここで飲むんかい。目の前でプルタブを開けようとする渋谷の持つ缶に必死に目を凝らす。外装は落ちた衝撃からか少し剥げていて読みにくい。 「えーっと.........ト、ト......トマト......汁粉......ソー......ソー、ダ.........?」 そういえば、毎回しつこくこれ頼むヤツがいたよな......そんなうまいのかね?ゲテモノ感ヤバ.........いや、ちょっと待て。何か大事な事忘れてないか。 「ま、待って、それ、もしかして」 止めようと手を伸ばした俺の目の前で缶は見事なアーチを描きながら爆発、いや噴出した。 ...一つだけ言える事がある。炭酸、振る、ダメ絶対。
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