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「あなたはどうしてこんなところに来たの?」
「……今日は、夏祭りの日だったんだ」
僕の返答に、彼女は息を呑む。
そんなに驚くことがあるだろうか――――僕は首を傾げた。
「……そう。お祭り、雨で中止になってしまったのね。それで退屈で外に出てしまったの?」
頷くと、彼女は何やら考え込むようにしてから、僕の眼を覗き込んできた。
僕はそれが少し恥ずかしくて、目を逸らした。
彼女はそれを見て少し困ったように笑うと、言った。
「そうね、楽しみにしていたお祭りが中止になったら……つまらないものね」
「え?」
「だったら」
彼女は少し言葉を切る。
それから、すっと手を差し出して。
「ぼく、一緒に遊びましょう?」
そう、言ったんだ。
僕は少しだけ迷ったけれど、彼女の寂しそうな顔がどうしても頭から離れなくて――――結局その手を握った。
彼女の手は、やはり酷く冷たかった。
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