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「ぼく、一緒に遊びましょう?」
その言葉を、今でも鮮明に覚えている。
僕はあの日の出会いを、一生――――いや、永遠に忘れることはないだろう。
僕が十二歳のころ。あの日は村で年に一度の夏祭りの日だったのに、生憎の荒天で急遽中止になってしまった。僕は、楽しみにしていた祭りの夜店を回れなくなったことで、酷く機嫌が悪かった。
辺りを見回しても田んぼと畑しかない、小さな村だ。子供が楽しめるような娯楽など限られていて、夏祭りはその代表格だった。僕も含め、村の子供たちの落胆ぶりは凄いものだったのが思い出される。
その日、降りしきる雨の中――――僕は一人で家を出た。
目的などない。祭りが中止になって、高揚していた気分を発散する場がなくなってしまったことが原因だったのかもしれない。或いは、ざあざあと絶え間なく降り続ける雨への八つ当たりだったのかもしれない。
僕は小さな折りたたみ傘を片手に、村中を歩き回った。少しでも体を動かして、嫌な気持ちを忘れてしまいたかったのだ。
村のはずれに、小さな神社がある。周囲は鬱蒼と生い茂る木々に覆われていて、薄暗く鳥居も目立たないが、境内は良く手入れされていて綺麗だった。落ち着いた気持になれるその場所が僕は気に入っていたのだ。
そして、いつもと同じように何気なく立ち寄ったその場所で――――僕は出会った。
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