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つくづく、人間とは冷たい生き物だと思う。
今の子供達もそうだが、大人も同様だ。
むしろ冷たい心を持った大人がいるからこそ、子供が同じように冷たくなっているのだとすら思う。
その証拠に、今日はいろはの十回目の命日だと言うのに、誰もいろはの墓参りに来ている様子はない。
だが、これはいつものことで。
十年間、この墓の前に僕以外の人が来るのを見たことがない。
いろはのお父さんは小さい頃に他界し、お母さんは、新しい男が原因でいろはを捨てた。
両親を失くしたいろはは、僕が入っていた、児童養護施設「わかばの里」に入所した。
僕もその時家族のことで悩んでいたので、いろはとはすぐに仲良くなった。
一緒に秘密基地を作ったり、職員の人に悪戯を仕掛けたり。
それはそれは楽しい毎日だった。
だけど、いろはの八回目の誕生日。
児童養護施設の前の道路で、交通事故が起きた。
被害者は、誕生日を迎えたばかりの、いろは。
児童養護施設の前で起きたとあって、世間は大変な騒ぎだった。
毎日報道陣が押し寄せて。
施設の子供達は、連日のインタビューで段々と衰弱していった。
だけど、僕が一番酷かったのかもしれない。
実は、僕は八歳にして初恋をしていたのだ。
その相手が、いろはだった。
伝えることも出来なかったという悔しさと悲しさで、僕は二度目の家出をした。
その時に、職員のペンダントを盗んで、そこにいろはの写真を閉まった。
小さな僕には不釣り合いだったが、今ではフィットしている。
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