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僕達が小さかった頃に、君と僕で作った、山奥の秘密基地、あったよね。
「秘密ハウス」っていう、小さい子特有の安直な名前の、僕達に見合った、小さなツリーハウス。
君が僕の隣にいなくなってから十年。
この間、秘密基地を久しぶりに見に行って来たんだ。
その時の話、聞きたい?
あのね、新しい住人がいたんだよ。
あの頃の、幼かった僕達と同じような、男の子二人と女の子一人の三人組。
秘密基地は、オシャレに改造されていて、僕達が作った要素はほとんど無かったけどね。
観葉植物も飾ってあったんだよ。
最近の子って凄いね。
それとね……。
「あの子達見てたらね、君に会いたくなっちゃった……。」
折角綺麗にした墓石に、涙が一つ。
ホロホロと流れ落ちる雫は、とどまることを知らない。
しかしせめてもと、墓石をもう一度、雑巾で雑に拭った。
そして、君が好きだったアネモネの花を供えて、僕は長話を終えた。
「また来るね、いろは。」
まるで人間にするように、墓石を優しく撫でる。
ただの石のはずなのに、不思議と温もりを感じられた。
しかし、冷たい石に必死に話し掛ける僕は、やはり滑稽なのだろうか。
墓参りに飽きて走り回っていた子供達が、こちらを見て何だかひそひそと話していた。
時折笑い声も聞こえて、いろはと違ってメンタルが弱い僕は、少し傷付いていたりする。
「はあ……。」
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