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すると、また料理の写真が現れる。投稿者はもう覚えてしまった。美琴、という女。
正確には、<美琴@マインドフルネス実行中♪>というアカウント名だ。じゅわじゅわと焼き立てのポークソテー。美味しさが伝わるように、一切れだけナイフで切り取られ、泡立つ肉汁と油が皿に溢れだしている。
ぐきゅううう。
胃袋が堪らず、悲鳴をあげた、しかも大声で。前に回したリュックで腹部を押さえ、そっと辺りを見回す。
飯テロ。
私は会ったこともない女の無差別攻撃に、夜ごとサバンナの小動物のように怯えている。
電車の窓ガラスのなか、くせ毛をひっつめ、毛玉だらけのカーディガンを着た我が姿は問う。
Twitterを開かなければ、飯テロ被害も防げるのでは?
確かにそれは一理。
けれど自分には友達がいない。日々のよしなしごとを徒然に吐き出せるのは、青い小鳥の御前だけである。親指で素早くタップするのは、どこかの誰かも感じているだろう、平凡な疲労とストレス。
”しごおわ。
お客様が残業で打ち合わせに遅刻
↓
私も残業
↓
腱鞘炎悪化”
ふう、とため息をつく。平日この時間に外食を済ませている、ということは、美琴は定時に帰っているのだろう。ナイフを持った指先が時々写っているのだが、その指先はラインストーン付のネイルが施されている。
事務作業によって慢性化した腱鞘炎に悩まされ、クリームを塗るのも億劫になった指先とは天地の差があり、買えない宝石を見るような虚しい気持ちになる。
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