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#2
笑いながらビルの屋上から飛んだところで目を覚ました。びっくりしたけど夢の中の私は随分と楽しんでいたみたいで、今朝よりはだいぶ寝覚めは良かった。泣き疲れて寝入ってしまったようでかなり深い時間だと気温でわかった。
あれ? 日を跨いだのならあれは〈今朝〉でもない。そもそも朝でもなかったけどもう知るか。時間感覚なんて長らく狂ったままだ。
まさしく寝ぼけ思考を巡らしていると突然話し声が耳に飛び込んだ。反射的に自分の口を左手で塞ぐ。数人の男の声だった。こんな深夜に良い予感がしない。恐る恐るコンテナから下を覗くと黒スーツに身を包んだ男たちが睨み合っていた。厭な雰囲気。男たちは三対三の状態で計六人。耳をそばだてて会話を聞いた。
「ブツも持ってこねえでよくもぬけぬけと出向いてこれたもんだ」片方は中央の男がドスをきかせて言った。
「私たちね、あなたたちリスペクト見せる。だから来たよ」対面の人らは中国人っぽかった。
どう考えてもロマンチックな会話をしているようには聞こえない。
「リスペクトもクソもあるか、こちとらキロ分一週間前に送金してんだぞ」
「だから待つよ、マニラでちょっとトラブルあった」
「そらそっちの都合だろうが、ああ? 舐めてんのか?」声色が変わる。
「なに、あなたたち取引初めてじゃないよ。私の言うこと信じれない?」こちらは目つきがギラついた。
「信じる信じないとかじゃねえだろ、この国じゃあオトシマエってのつけるんだぞウェイさんよ」
真ん中の日本人が間合いを詰めた瞬間、左右の中国人があっさりと銃を抜き男に向けた。すると日本人側もすかさず抜いた。
え、ここって日本だよね?
「お、なんだ東堂会と戦争始めようってのか?」
ポケットに手を突っ込んだまま男は狂気的な笑顔を覗かせた。
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