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1、
俺は下山している最中だ。だが、今は足を止めている。
山には出会いがある。
そんな言葉が頭に浮かび、正面に注意を注ぎながら、視線を上げた
緑と黄色の葉っぱの隙間から、青い空と西に傾き始めた太陽が見える。夏の終わりの景色だ。そして、日が暮れるまで時間があるということでもある。
今いる場所は、広くて平らな登山道。周囲は、少し前まで岩と低木、今は背が高い針葉樹だ。ということは標高1500m付近だろう、山の中腹だな
空気が乾燥していて、露出した肌がサラッとしている。地面も乾燥している。しばらく雨が降っていないのだろう。ブーツの中の足に、小麦粉のような
サラサラした砂の感触が伝わってくる。俺の口の中も、湿度が無い乾燥した状態だ。ただ、背中と胸には、土石流のような汗が流れ始めている。
今、俺は非常に困った状態にあるのだ。
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