今昔、親子代々の……

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今昔、親子代々の……

山と田畑に囲まれた田舎町、 ここに生まれ育って17年…… 高2の女子にもなれば、 食べる事と恋する事へ生き甲斐を感じる これは私だけではないだろうな。 何度繰り返しても答えは出ない、 食べる事は満腹になれば気が済み そこでお終い。 恋は、ずっと同じ相手ともゆかず その度に振られてしまう。 そこで、 失恋話をお母さんに相談をした。 冷めた意見しか言わず とうてい答えもわからないから、 お次はおばあちゃんに話した。 おばあちゃんは言う…… "わしも何度も失恋したよぉ、 それは数知れず、覚えている以上にな。 亡くなった爺さんとは歳は18の社会人になってから知りおった。その爺さんとも、くっついたり離れたりしてようやく結婚できたんよぉ。 今思えば、学生時代ん時は自分のわがままを聞いてくれないから別れたんやろなぁーと思うちょる。新しい男の人を好きになる度、前の人と同じような気持ちになる時期があってな、よく振り返っとったわ。 良いことしか覚えとらんくて、その時以上に今付きおうてる人へわがまま言うてたんよ。 それも何度か繰り返し失恋した時は、ある時から理由はわからんくて、泣きながらお風呂でヘチマで体をゴシゴシ洗っとった。 泣いてて無我夢中やったから、体はいつもよりきれいになるわなぁ。でもな?気持ちはずっと未練が取れんかったんじゃよ。毎日のようにヘチマで洗ってた、それくらいしか出来んかったからなぁ。女心と秋の空って言うやろ? そのうち、また新しい人を好きになって、前の人への気持ちは薄れていったんじゃ。 何度も何度も失恋して、その度にヘチマでゴシゴシ体を洗うて、それを無意識に繰り返したんや。学生時代も終わり頃、もうこの田舎を離れて就職しようと集団疎開を決めていた時、爺さんが現れたんよぉ。 何の変哲も無い田舎の少年でなぁー、 魅力も何も無かったんじゃが、それまでの男の人には無いものがあったんじゃろうなぁー、疎開先で一緒になって働きながら話しかけ親しくなってデートして、偶然にも家の都合で一緒にこの田舎へ戻ってきた時じゃった。 丁度わしの誕生日でな、爺さんはプレゼントを用意してあるからと呼び出されたんじゃ。 それがこの家と小さいながらの畑と、その一角にあるヘチマの棚でな、ここで一緒に暮らそうと求婚されたんや。当時は何と言って良いか言葉も出んくてなぁー……" 暫く黙って、縁側から見える畑を眺めるおばあちゃんの眼から光るモノが落ちた。 "おぉー……ごめんな? 今年採れたヘチマがあるから、これ持ってお前も体を洗うようにするんじゃよ? この話は、お母さんには内緒じゃからな わかったな?" 私は、少しだけ貰い泣きとヘチマをおばあちゃんから渡された。 お母さんには内緒だから、このヘチマを隠しておかないとと思い場所を探していた最中、押入れを開け隅にある古い茶箱を見つけ、そこに隠そうと開けてみた。 すると、それはお母さんの思い出の品物で一杯詰まった茶箱だった。 一番下には、布に包まれた三十年前の日付が書いてある。中身は、今私が持っているヘチマと同じだった…… お母さんのヘチマの隣に私のヘチマを並べて隠し茶箱に蓋をした。 おばあちゃんの孫、お母さんの子供で良かったなぁ、と思った。 『恋は、DNAで強くなるんですよ!』 我が家のヘチマの役目を知った、 高校2年の秋の事だった……
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