【登場人物】

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 ユキちゃんは怖い。  一見、女性的な優美な顔立ちの彼は、俺に絡んできたヤンキー達をたった一人で戦闘不能にしてしまうほど強く、首から下は鋼のような筋肉で覆われていた。  同じ男として、どうすればそんなガタイになれるのか聞いてみたところ、『山に(こも)って木を引っこ抜いてたらこうなった』と意味不明な返しをされて以来、彼の生い立ちには極力触れない様にしている。  保健室で押し倒された時に見た彼の背中には、虎と龍が刻まれていたし、恐らく特殊な環境で育ってきたのだと思う。  それが原因なのかわからないが、ユキちゃんはバッタ似の俺に異常な執着を示し、口を開けば『もう食っちまいたい』と呪文のように繰り返し呟く。  彼はペットのバッタが死んだ後、実際にそれを食ったそうだから、性的な意味なのか食用的な意味なのか判断がつかないのが更に怖い。  恐怖に駆られた俺は、それとなくバッタがいそうな草むらに彼を誘導して他のバッタに目を向けさせようとしたが、『俺がバッタなら誰でもいいと思うような男に見えるのか?』と怒らせてしまい大失敗。  ダメ元で初代仮面ライダーの話を振ってみたものの反応が薄く、単なるバッタ好きでもないようなので、彼に純潔を奪われるのも時間の問題だと感じた。   dc79758b-67e3-467d-a485-4199744af38e
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